2014年8月号 No.492

発行 : 2014年8月23日
【 巻頭言:主任司祭 晴佐久 昌英 】


ここヤシ キャンプ

主任司祭 晴佐久 昌英

 半年前から準備してきた「ここヤシ キャンプ」も、無事終わりました。
 正式名称は、「こころのいやしのための青年キャンプ」で、精神的な病気、障がいなど、心に様々な問題を抱えて苦しんでいる青年たちに、良い環境ですごし、良い仲間と出会い、良い知らせ「福音」に触れてもらいたいと願って始めたキャンプです。
 司祭として日ごろ相談を受けている若者たちの中には、統合失調や定型うつ、新型うつ、パニック障がいや発達障がい、その他さまざまな生きづらい現実を抱えている人がいます。特に近年、身近にそのような若者があまりにも増えてきたので、これはきっと摂理であろうと、この仲間たちとキャンプをやりたいと思い立ったのでした。

 それもこれも、昨年、そのようなことをするために合宿所を建てたからです。
 合宿所の場所は、奄美大島の南に位置する加計呂麻(カケロマ)島で、十数年来無人島キャンプのベースキャンプとしてお世話になっている海宿の隣接地です。美しい海に面している上、周囲は奄美の森に囲まれており、自分たちのほかだれも住んでいないという絶好のロケーションに恵まれています。朝夕、だれもいない浜を散歩しているだけでも、こころが安らぐのを感じます。
 合宿所の海側にはハンモックがつるしてあり、今回の人気スポットでした。ハンモックでの昼寝ほど気持ちのいい時間はありません。日ごろの緊張から解放されるひと時です。また、前の浜から鉄橋の桟橋が伸びているのですが、その先の30畳ほどのフロートの上ものんびりすごすのに絶好の場所です。釣り好きのメンバーがここで次々と魚を釣ってくれたので、焼いたり揚げたりして頂きました。カワハギの刺身は美味しかった!
 敷地が600坪あるので、今回は広場にゴールネットと得点掲示板を用意して、フットサルをやりました。みんな熱中して相当盛り上がったのですが、全員すぐにバテてしまいました。もっとも、汗をかいて海に飛び込むのは気持ちいいものです。また、内海で波が穏やかなので、風を切るシーカヤックも涼しくて気持ちがいい。二人乗りのカヤックが3艘あるので、来年はぜひレースをやりたいと思っています。
 寝具は20組あり、もちろんトイレも簡単なシャワーもあります。ご自慢は、冷蔵庫が2つ並んだ広いキッチンと、ステージのある音楽スタジオ。スタジオには、ギターやキーボードはもちろん、マイクにアンプ、PAとスピーカー、ドラムセットまでそろってます。今年は、キャンプの参加者に手伝ってもらって、ステージの天井に照明用のトラスを組みました。これでライブもできるようになり、これからが楽しみです。今年もさっそく、音楽好きのメンバーがステージでミニライブを楽しんでいました。
 昨年秋には、そのスタジオから庭に向けて、ウッドデッキで16畳ほどの屋根付きテラスを作ったので、このテラスをステージにした屋外ライブもできるようになりました。昨秋はさっそく、海宿のお祭りを開き、有名な女性歌手UA(ウーア)が来てこのステージで歌ってくれました。テラスは風通しも良くて過ごしやすく、今回は結局、三食ともそのテラスで食べることになりました。
 今年は、ともかく食事だけは美味しいものを出そう、いろいろ不満はあってもおいしい食事があれば心は穏やかになるからと、友人のシェフを呼んで、3食作ってもらいました。パリのユネスコ大使公邸シェフもしていた彼は、自分の東京のお店を休業にして来てくれたのです。おかげで、何から何までおいしかった。テラスで、みんなでゆったりと食事をしていると、本当に天国にいるような気持ちになったのです。
 そうして、なんと言っても、毎日午後5時に始まるいやしのミサ。弱い仲間たちが、つらい現実の中で、しかしだからこそ主はともにおられると信じて捧げるミサは、まさに天国の始まりでした。このキャンプによって、確信はますます深まりました。神の国は、弱く小さな私たちの間にある、と。一人の参加者のことばが忘れられません。
 「こんなぼくでもいいんだって思えました」

 そのうちに、敷地内に小さな聖堂を建てるつもりです。もう設計も固まっています。
 ただ、この敷地は現在借地なので、契約の5年内には敷地をそっくり買い取る必要が出てきます。もっとも、ひと坪1万円もしないので、なんとかなるでしょう。神のみ心に適っているなら、必要なものは必ず与えられますから。
 この悪い世の中に、小さな天国を、確かにひとつ生み出すって、ステキでしょ?

【 連載コラム 】


連載コラム「スローガンの実現に向かって」第44回
心のオアシス

稲城・川崎地区 酒井 眞知子

 皆さんこんにちは。
 私が初めて多摩教会を訪れたのは4年前です。いろいろなことがあり、18年振りにミサに与りたいと思い、近所の教会を探し多摩教会を知りました。
 ところが、何度も多摩教会にたどり着けず、「きっと信仰心が足りないから、教会に行きつけないのだ・・」と、今の私では、到底思わないような感情を抱いていました。やっと参加できたミサでは、お祈りの言葉が変わっていたこと、歌での賛美が多いことなど、驚きの連続だった私に、入門係や信者さんがいろいろサポートしてくださいました。神父様は、皆さんと一緒に勉強しながら入門係になることを勧めてくださり、入門係になることができました。

 ミサや講座を通してカトリックの年間行事や意味を知ることは、イエス様が人間として生きていたことが実感できる絶好のチャンスです。
 福音がどんなことなのか? 祈るって何を祈るのか? 講座に参加される皆さんの質問は素朴で、真髄をついていることが多く、いかにも難問に聞こえることを、神父様が嬉しそうに(自信満々に)答え、入門係の誰かが突っ込みを入れる、笑い声の絶えない楽しい入門講座です。
 その中で、生きていくことにも、すごくつらい思いをしている方々にも、たくさん出会いました。私も同じようにつらい体験をしたことがありました。ついつい、ダメな自分を許せない気持ちになり、不安になり、ミサがとても待ち遠しいこともあります。
 そんな時、入門講座で聞いた言葉や、癒されてホッとし、笑顔になった受講者の顔を思い出します。息苦しさが楽になる瞬間です。何度入門講座に参加していても、弱い自分が不安の風呂敷を広げてしまいますが、ここに来れば大丈夫! 愛されているのだと思えることがとてもうれしいです。
 「裁きよりもいつくしみを」。教皇フランシスコのメッセージを実際の社会の中で実現することが難しいように感じます。まずは家庭から、職場から、少しずつ輪が広がることを夢見て、種を蒔いています。

 私は普段看護師として働いています。
 十人十色、同じ病気でもひとりずつ抱える問題は違い、治療の目標も違います。朝、気持ちよく目覚め、食事を取り、自分の役割をこなし、活動し、排泄をし、眠る。どれひとつ不十分な状態でも苦痛を感じます。
 苦痛のひとつにスピリチュアルペインという言葉があります。精神的な痛みで、病気等によって行っていた役割を失ったとき等に起こります。薬を使っても良くならないのに、体の障害に合わせた役割や目標が新たにできた時、痛みが和らぐことがあります。
 カトリック教会に古くから受けつがれている慈愛や聖霊の働きは、正に苦痛を取り除く重要な要素です。
 「○○さんのためにお祈りしています」と、教会に通うまでは、意味がよくわかりませんでした。ミサや入門講座、「ここクリ」(心の病で苦しんでいる人のためのクリスマス会)など、相手を思いやることに真剣に取り組んだ時、自分一人では実現できない聖霊の働きが実際に起こります。知識や技術だけでは聖霊は働きません。
 とは言え、これから、超高齢化社会に向かい、医療や社会制度は変わっていきます。現場で働いているからこそお役にたてることがあるかも知れません。その際は、お気軽に声をかけてください。

【 例会報告 】


「初金家族の会」からのお知らせ

担当: 志賀 晴児

 8月の当会はお休みしましたが、9月5日(金)の初金ミサの後、11時からまた集まりましょう。
 この度は、ベリス・メルセス宣教修道女会からメキシコに派遣されて、福音宣教に励んでおられるシスター真神 シゲさんのお話を聞くことにいたします。シスターはメキシコだけでなく、これまで長年、ペルー、ニカラグア、グアテマラなどで身寄りのない、あるいは障害のある子供たちの世話をしながら、福音を宣べ伝えてこられました。
 シスターのお話を聞きにご参加ください。