巻頭言:主任司祭 豊島 治「仲良くします」

仲良くします

主任司祭 豊島 治

 記録的な猛暑と度重なる災害に見舞われた夏でしたが、今なお復興に向けて困難の途上にある被災地の方々に心を向け、できる限りのサポートに力を合わせてまいりましょう。

 7月に起こった「西日本豪雨災害」については、朝日新聞や日経新聞の情報によると、避難勧告・指示の対象は6万人にものぼる大きなものでした。200カ所以上で川の水が溢れ、被害が出ました。現在、カトリック教会として広島教区の設置した各所のボランティアセンターが機能し、継続的に支援しています。
 9月4日の台風21号では、大阪湾の高潮が3.7メートルに達したと推定されると発表されました。空港の機能改善状況が多く報道されていますが、大阪だけでなく、四国・近畿地方を含めた広域で、建物損壊・土砂崩れなどの打撃を受け、今も停電の中で過ごしておられる方もいらっしゃいます。
 9月6日の地震は、北海道はじめての震度7という恐怖もさることながら、土砂崩れ・液状化による生活基盤のダメージや、広い範囲で起こったインフラのダメージも大きく、気温の低下も今後に響いていくといわれています。カトリック教会では、札幌教区のカリタス札幌が、ボランティア派遣をしています(参加できる方は北海道内在住の方に限られています)。

 多摩教会では、8月末から2週間、インド、ケララ州の水害に対しての緊急募金を行いました。8月の中旬ミサの参加者が、スマートフォンの翻訳アプリを使って、現地への祈りのお願いをされていました。日本ではほとんど報道されていない災害ですが、国際カリタスの情報をみると緊急メッセージとなっており、多摩教会内での呼び掛けとなったものです。短期間の呼び掛けでありましたが、90人弱の方が応えてくださいました。カリタスジャパンを通じて現地に送られました。

 日常の中で与えられている情報が、いかにほんの一部で偏っていたかということを、災害が起こると感じることがあります。報道情報が多い地域とそうでない所。わかりやすい映像が重視され、映像化しづらい所は伝えられていない伝達の限界。それは、「行ってみないとわからない」ということなのでしょう。そうかといって、各々は、日常で動ける範囲が限られています。唯一だれでもできること、それは、私たちは「これでおわり」という自分で定義づけして感心にリミットを設けることではなく、起こっている出来事を記憶し寄り添っていきましょう。その前向きになる姿勢は私達の信仰にある十字架にあります。わたしたちの「どうしようもない」というあきらめの気持ちは、十字架を見上げるとき、「まだ、いける」という意識を起こします。

 私は夏の終わりに、短い時間でしたが福島のカリタス南相馬に行ってきました。今まで車で行っていましたが、仙台から常磐線を使って、最寄り駅の原ノ町駅に向かいました。休日の常磐線は、若い人が仙台に遊びに行った帰りでしょうか、多くいました。仕事で旅行で来た方もおられました。被災した山元、亘理にも多くの乗降がありました。
 カリタスのボランティアベースは、有名なスーパーボランティアさんみたいに、黙々と作業するだけでなく、地域の方々とつながりをもってきました。今年で5年。被災者の方々が地域の人々の集まりの奉仕をしてくださる場にカリタス南相馬がなっていました。現地のスタッフにもなっていただき、会議のときにも、話してみなければわからない心情を吐露していただき、それを受け止め、今後の展開を考えて、共に歩もうとしています。現地で話して受け止めたのは、「こんな悲惨なことは二度と起こらないでほしい」と「生きる喜びを皆が感じてほしい」です。愛の奉仕という意味のカリタス。この言葉をかみしめて帰りました。

 災害は他人事でありません。多摩教会では大掃除の日に「避難訓練」を行っています。意識して参加を願います。次回は大掃除のあと、救命や災害防止の勉強の場を設けることになっています。どうぞ参加してください。知っていて損はない事柄です。
 でも、東日本大震災のあと、仙台教区の災害対策本部長がおっしゃったことが記憶から離れません。とっても大事な言葉だったからです。それは、
 「一番の災害対策は、『日ごろからみんな仲良く』だよ」