連載コラム:「美味しいパスタスープの作り方」

連載コラム「スローガンの実現に向かって」第34回
「美味しいパスタスープの作り方」

桜ヶ丘地区 奥原 華

 どんな時もどんな所でも、だれかのオアシスであること・・・そんなことがすべての人の現実となって、世界がグンと平和になりますように。

 15年ほど前に小さな巡礼団に参加しました。
 成田を出発し、イタリアへ。ミラノの空港からクロアチアのスプリト空港へ。そこから戦火の傷跡もまだ生々しい旧ユーゴスラビア (ユーゴスラビア紛争:1991〜2001の間に旧ユーゴスラビアで民族紛争が起こり、6つの国に分かれる。クロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナは1995年に独立) のいくつかの町や村を通って、延々とバスに乗り、ようやく目的地のメジュゴリエに着いたのは、夜中のことでした。それは、ボスニア・ヘルツェゴビナの小さな村で、マリア様のご出現で知られているのです。
くたびれ果てて、口数も減り、やっとの思いで民宿にたどり着いた私たちを、宿屋の主人は人懐っこい笑顔で出迎え、開口一番、こう言ったのです。「勝っちゃってごめんなさい」
 ちょうど当時、サッカーのW杯が開催されていて、初参加の日本がやはり初参加のクロアチアに負けたばかりでした。みんな思わず笑い出し、脳みその緊張が一気にほぐれたように感じました。

 巡礼団は食堂に通されました。そこではちょっとシャイだけど頼もしい女主人がおいしいライ麦パンとスープを私たちのために用意して待っていてくれました。今思うと、とても素朴なパスタスープでした。
 「星」だったか、「アルファベット」だったか、細かいパスタが唯一の具材で、ごく普通のコンソメスープだったと思います。それでも、とてつもなく美味しいパスタスープで、あれから幾度かあの味を再現しようと試みましたが、成功したことがありません。
 ちょうどそのころのメジュゴリエは、若者の集いが催されていて、世界中のありとあらゆる国からやってきた若者たちの熱気であふれかえっていました。
 若者の集いの大会が盛大に開催されたマリア様の祝日の翌日は、ご変容の祝日で、マリア様のご出現の丘に夜中から登り、朝日を眺めるのが、メジュゴリエの恒例行事となっています。
 私たちも登りました。すがすがしい朝でした。メジュゴリエ全体がオアシスみたいなところでしたが、あの宿屋の主たちはオアシスを見事につくり、美味しいスープで私たちをもてなし、私たちは疲れもなんのその、世界中から来ていた大勢の若者たちとともに丘に登り、歩き回り、ミサに与り、讃美歌を歌い、平和のうちにメジュゴリエで過ごすことができました。

 最近、少しわかりました。美味しいパスタスープの作り方は、まずはオアシスをつくること。
 あのとき食べたスープは疲れた人を癒す、まさしく荒れ野のオアシスのスープだったのです。
 あれから洗礼の恵みも授かり、現在、多摩教会で「カフェ・オアシス」という、教会にいらした人にコーヒーをサービスするグループにも参加しています。ひたすら美味しいコーヒーを提供できるように、文字通り、オアシスであることを心がけたいものです。まずは身近なところから。